ホームの部屋 バーに

リンク: ホームの部屋 バーに : ケアノート : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞).

娯楽見つけ落ち着く

 心不全で入院した父(アンリ・ガイヤールさん=92歳=)は病院三つを経て昨年5月に退院し、自宅で母(洋画家の江見絹子さん=83歳=)と私との3人暮らしに戻りました。

 父はベッド近くのポータブルトイレまで歩くのも危ない状態。神経質な母は他人が家に入るのを好まないのですが、妥協してもらって、日替わりでデイサービスと訪問介護を受けることにしました。

 父は要介護4。デイサービスだけで介護保険で使える限度額を超えてしまって、ヘルパーさんの依頼は自費でした。

 それより、ヘルパーさんが来ると、母の神経がまいってくる。父も私もヘルパーさんも疲れきって、だれかが倒れるのは時間の問題でした。

 そこで、民間の有料老人ホームを探しました。ケアマネジャー、病院、知人に尋ね、ネットでも調べ、私自身見学に行きました。

 いい所が見つかって、最初に1週間のショートステイ(短期入所)をしましたが、父は「自宅に戻る」。

 本人の意思に沿わないで入居しても、後から不満が出てきます。そこで父の気持ちを尊重して自宅に戻りました。再度自宅での生活が危うくなったところで、なぜ、ホームが嫌なのか父に聞いてみたら、「娯楽がない」。

 確かに老人ホームの娯楽といえば、折り紙や散歩が一般的。大人には物足りないかもしれません。原因がわかれば対処の仕様はあります。

 そこで、逆転の発想をして、「お父さんの部屋をバーにしようか。バーのマスターになったらいいじゃない」というと、喜んじゃって。

 ホームに聞いたら、病院じゃないからお酒は禁止していないという。じゃあ、というので、部屋をにぎやかに飾り付け、スーパーでお酒20本をまとめ買いしました。ウオツカ、シャンパン、テキーラ。船乗りだった父はラムが好き。父のラムはフツーのもの、私が飲むためのアイリッシュウイスキーはちゃっかり高いのを張り込んじゃいました。

 壁にはダーツを取り付け、ダーツバーにしました。これが役にたつんです。父がぶうたら言い出したら、私は的に向けて矢を投げる。気合に押されて父は黙ります。

 昨年6月、自宅にほど近いこの有料老人ホームに入居し、父もようやく落ち着きました。もう酒瓶も自分では持てませんが、館長さんが時々一緒に飲んでくれます。

 父を説得して、バーのマスターにしたことは私の生涯で最高の仕事だと思っています。(作家)

(2007年1月25日  読売新聞)Anna
荻野アンナさんが、読売新聞のケアノートに連載しているものです。
高齢者にとって居心地のいい環境とは何だろうか?
と時々、考えます。
どこの施設も似たような仕様になっており、最近は、アートセラピーを
謳い、壁に絵画を、庭には彫刻を並べて自慢する。
しかし、絵画に興味のない人間が、それを見て喜ぶだろうか?
十人十色、居心地のいい環境は異なるでしょう。
娯楽も、折り紙じゃ嫌だ、映画が見たい、音楽を大音量で聴きたいなどがあると思います。
私も、管理されるのは嫌いだから、起床時間、就寝時間も自由にしてほしいと思う。
意外と、施設に対する不満は、こんなところにあるのかもしれません。




  1. はじめまして。
    以前ホスピスで検索をかけて辿り着いて以来、
    時々覗かせていただいてます。
    >高齢者にとって居心地のいい環境とは何だろうか?
    >と時々、考えます。
    私も時々考えます。
    いろいろ共感するところもあり、
    先ほど自分の記事からここにリンクを貼らせていただきました。
    どうぞよろしくお願い致します。

    Comment by ゆら — 2007年1月30日 @ 4:37 PM

この投稿へのコメントの RSS フィード。 TrackBack URL

コメントする