鬼籍の人 1

昨日は、何事も起きなかったと、ほっとしていましたが、朝七時に、電話。

90代の、私の患者さんが、呼吸が止まっているようで、救急車を、今、呼んだとの事。

電話で、御家族と話していると、救急隊と代わってくれとのことで、話してみると

すでに、心配停止状態で、心肺蘇生中とのこと。

一月前から、状態が思わしくなかったので、普段、御家族も仕事で忙しいので、日曜日に出向いて今後のことを話し合ったんです。

2時間ほどかけて。

私は、これは病気じゃない、立派な老衰だとお話したのですね。

家族も、できれば、最後は自宅でとお話しされました。

ただ、いつも、私は付け加えるのですが、方針は方針で、予想できぬ事態もありうるので、

その時は、病院や施設に移ることも恥ずかしいことではないですよと。

予想できない事態とは、例えば、介護者の健康上の問題が発生したときなどです。

そして、もし、朝冷たくなっているようなことがあったら、お時間を頂ければ、必ず、ここで、診断書を書きますから、待っていてくださいね。

119番とか、110番をかけずにね。

きれいな、最後を迎えさせてあげましょう。

こういつも言っているのですが。

まず、御家族を、落ち着かせようと、「一時間ぐらいで、そこに到着するから、どうだろうか?」

と声をかけると、

「親戚が集まってきていて、私の一存では決められない。」

こうなっては仕方がありませんから、せめて、転送先の当直の先生に、電話でもと思い行き先を聞くと、この患者さんが、一度も、受診したことがない病院とのこと。

電話をつないでもらうい、御家族は、延命はおそらく、希望していないと思うと伝えました。

しかし、もう一度、御家族の意思を確認してくださいと伝えました。

延命をしないのに、救急車で病院へというのも、なんか矛盾した話です。

ちょっと、というか、かなりがっかりしていると。

30分ほどして、また、電話があり。

御家族から、「もう、こと切れているとのことで、死亡確認していただきました。」

少し、ほっとしました。あの患者さんが人工呼吸器には、つながれなかった事が、せめてもの救いです。しかし。

「いや、それが大変なことになっちゃってさあ。自宅で亡くなって、この病院にかかったことがないから、今から、警察がきて検死だって。」

やはり、後悔することになってしまった。

あと、一時間待っていてくれれば、いつもの、あの場所で、ゆっくりと深い眠りに、今頃つけていたのに。

別に、御家族を責めているのではありません。

法律や制度どおり行けば、確かに、検死かも知れない。

最近の朝刊を見ると、在宅死を、現在の10%から40%まで引き上げたいと国は言っている様だけど、制度だけでなく、何か、この国には家で死ねないものがあると言うか、何か欠けているというか、うーん。

鬼籍に入るのも困難だらけですね。

【鬼籍】 きせき

死者の姓名などを記入する帳面。過去帳。点鬼簿。
――に入(い)・る
死んで過去帳に記入される。死亡する。





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